間近に迫った超高齢社会を見据え、国は療養患者の在宅化をさらに推し進める方針を打ち出しています。このことが在宅患者の褥瘡発症率にどう影響するかを考えてみますと、今後は増加傾向が続くと言わざるを得ません。なぜなら、国民の褥瘡に関する認知度は非常に低く、それは褥瘡予防の知識など殆どない家族に、多くの時間、在宅介護を任せるということになるからです。つまり褥瘡発症の危険性から考えると、それ自体大きなリスク要因になるということです。また、日本褥瘡学会発足後、病院、施設における褥瘡発症率は大きく減少してまいりましたが、ただし、それで完全に褥瘡が封じ込められたわけではありません。実際には医療のプロがいくら揃っていても悪条件が重なれば褥瘡は発症します。ですから、知識のない素人の家族にとって、その予防が簡単なはずはありません。実はすでに亡くなりましたが私の母も病院で褥瘡を発症した患者の一人です。主治医から褥瘡の存在を知らされた時には、すでに余命宣告を受けるほど悪化した状態でした。「本当に母の命を救う方法はないのか」という疑問から私は褥瘡について一から勉強し、その後専門医との出会いにより奇跡的に一命を取り留めることができたのです。私たち家族と同じような苦しみはもう誰にも経験してほしくない、そんな気持ちから思い立ったのが、このたびの褥瘡患者と家族の会の設立であります。今や褥瘡は、多くの臨床研究により、予防も治療も大変難しかった時代から、多くを予防し、治せる時代に変わってきました。しかしながら、それを現実のものにするためには正しい知識と、状態に合った適切なケア、そして何より大切なのは「褥瘡は絶対につくらない」という強い意識であります。褥瘡に苦しむ患者、家族を減らすべく、当会では今後その啓発活動に努めてまいります。